寿司AIガリオ

ガリオで遊んでみた その2

プロモーションの仕事を頂戴してから、それが失敗するまでの過程。 〜人工知能を上手に紹介したかった〜

熊谷真士

こんにちは。

この記事は、元々、とある「人工知能」を紹介するという目的で書かれた記事だ。すなわちPR記事である。いや、PR記事だった。しかし。

依頼を貰ったは良いものの、書き手である私クマガイの実力不足により、うまくPR記事を完成させることができなかった。

今回、うまくPR記事を書き切ることが出来なかったので、いっそ、その苦悩の過程を赤裸裸に発表することで、逆に記事の完成としたい。

ちょっと何を言ってるのか分からないかもしれないが、順を追って見ていこう。


まず大前提として、ブログを書いていると、企業から商品のプロモーションの依頼を貰うことがある。

プロモーションをする対象はと言えば最新の電子機器だったり、携帯アプリだったり、お菓子だったりイベントだったり本だったり、様々だ。

こういったプロモーションの仕事を、受けるかどうか、ブログを書いている人達はどのような基準で決めているんだろうか?

ブロガーの友達があまりいないのでよく分からないが、恐らく「本当に読者にとって有益な情報なら紹介する」とか「プロモーション感を徹底的に排除出来るなら書く」というスタンスが一般的なんだろうと思う。

というか、さすがに普段読んでくれている人に突如として何かを紹介する手前、理論上このスタンスしか有り得ないだろう。

「金のために変な商品紹介の依頼を受け始めた」と感じれば、きっと読者の人もゲンナリしてしまうだろう。それでは永続性がない。

一方、私の基準はと言えば、“報酬金額”のみ。

なぜ読者ファーストではなくお金ファーストなのかと言うと、エット、それは、エーット、お金の、亡者、ダカラ(V)♡¥♡(V) ダヨ(V)♡¥♡(V)

お金♡ お金♡ ピヨピヨ(V)♡¥♡(V) 




さておき、そんな私は先日、とある依頼を受け取ったのであります。

メールには報酬金額が記載されていなかったが、依頼主が日本アイ・ビーエ・エムというウルトラハイパー大企業であることから該当商品における販売促進費も潤沢に存在するものと想定し、ゼロ点ゼロゼロゼロコンマゼロ2秒間にも及ぶ熟考の上でこの依頼を受けることを決断。

PRするのは、「日本アイ・ビー・エムが提供するIBM Cloudを活用してできることを寿司職人AIガリオ〈Gario〉に詰め込み寿司を極めたAIにしIBM Cloud上のWatson APIを使ったLINEのチャットbotにしたもの」とのこと。

横文字が多いことに加え、自分自身のITリテラシーが低いことにより、何が何だか全く分からない。分からないが、PRするぞ。PRしたい。ああ早くPRしたい。報酬を得たい。


ほどなくして私は、先方のオフィスで商品の説明を受けることになった。

自分が一体全体何のPRをすれば良いのかメールの文面からは全く理解することが出来なかったが、直接商品の説明を受ける場があれば安心だ。




会議室で待っていると、陽気なエンジニアがニヤニヤしながら現れて、私は彼のことが一目で好きになった。

私は元来、ニヤニヤしている人間が大好きなのだ。ちなみに、常日頃から眉間にシワを寄せている人間は大の苦手だ。




「今回熊谷さんに紹介頂きたいのは、『ガリオ』という名前のAIです。」

彼は説明を始めた。

曰く、LINEで友だちになることで、この『ガリオ』というオッサンと会話をすることが出来るらしい。このAIのオッサンこそが、今回PRすべき代物だ。

彼は、意気揚々とガリオの魅力を語り始めた。

「ガリオは、寿司を極めたAIなんです。」



私は、説明する彼の姿をパシャパシャと写真に撮りまくった。

ガリオには、3つの機能があると言う。

「1つ目は、心握り寿司です。これは、感情を伝えると、その気分にぴったりな握り寿司をガリオが提案してくれるというものです。面白いでしょう?

そして2つ目は、創作寿司。これは、自分の出身地や味の好みと行った条件を伝えることで、ガリオがオリジナルな寿司を発表してくれるんです。ハッハッハ。なかなかユニークでしょう?

そして3つ目は、寿司スキャン。寿司の画像を送ることで、それが何の寿司かガリオが教えてくれるんです。例えばサーモンの写真を送ると、これはサーモンですと教えてくれます。どうですか?めちゃくちゃ面白いでしょう??

熊谷さんにはこの面白寿司AIガリオで心ゆくまで遊んで頂き、その過程を面白おかしく書いて頂くことで、面白いプロモーション記事を作って頂ければと考えています。」





...




ンぇ???


この説明を聞いた瞬間、私の脳内には120個のクエスチョンマークが浮かびあがった。あまりのワケの分からなさに目と眉毛が釣り上がり、その顔は般若の様相を呈し始めた。

まずシンプルに、使い方が全く分からない。誰がいつ使うんだ? そのAIは。

感情を送ると寿司を提案してくれる?
いや、寿司を食おうとしている人間は、感情を分析して寿司を提案して頂かなくても、その時に食いたい寿司を、食うのでは?

出身地や味の好みを送ると寿司を提案してくれる?
いや、寿司を食おうとしている人間は、出身地や味の好みに応じたオリジナルな寿司を提案して頂かなくても、その時に食いたい寿司を、食うのでは?

寿司の画像を送ると、何の寿司かを教えてくれる?
いや、その寿司が何なのかは、頼んだ本人が一番よく分かっているのでは?





しかし般若面な私の疑問もどこ吹く風、エンジニアの彼はニヤニヤしながら『ガリオ』のエピソードを語り続けた。

「寿司スキャン」を機能として実装する為には、寿司の写真を学習データとして取り込まないといけなかったらしい。

彼は様々な寿司を撮影するために寿司屋に出かけ、一心不乱に寿司の写真を取り続けたそうだ。

彼はこの機能を作り上げるために奔走したのだ。愛おしい。私は、何の寿司か分からなければその場で店員に聞けばイイだけなのでは?という疑問を、グッと飲み込んだ。

彼はガリオの説明を終えると、最後に、「ガリオによって寿司の世界に革命が起きてしまうかもしれませんね。」と言った。


...




起きない。




私は、このガリオという存在によって寿司の世界に革命が起きる日は決してこないだろうと確信した。

仕事を貰っているということに対する感謝、そして目の前の彼に対する好感や敬意。それらを考慮しても断言できる。

絶対にガリオは寿司の世界に革命を起こさないだろう。


革命を起こさないどころか、何なら、「誰にもオススメできない」とさえ言える。というか、誰がいつどのようなシチュエーションで使うのか、全く想像ができない。AIの無駄遣いと言っても過言ではない。

この『ガリオ』というこれは、地球上に無数に存在する「オススメできないもの」の中でもトップクラスにオススメできないものの一つかもしれない。





しかし、そんな私のリアクションなど、なんのその。彼はガリオの説明をする際、終始、大爆笑していたのである。

自分のつくった謎のAIを説明しながら自分自身が、ツボに入っている!!

私は、彼につられて爆笑した!!アハ!アハハ!良い!良いぞ。この人、なんか凄い好きだ。

全人類は刮目せよ!!幸せとは、このことである!!素晴らしい!!素晴らしいではないか!!物作りとはこうあるべきだ!!

エンジニアは大笑いしながら、ポンポンと手を叩いて笑いながら語る。「いやあ、これは、凄い面白いPR記事になっちゃいそうですね〜」








ならない。

たしかに素晴らしい人物だと思う。しかし、彼が愛おしい人間であるから、ガリオも最高、というロジックは成り立たない。なぜこんなものを作ったのか。

こうして、私は無事、全く使い方の分からない謎の寿司AIチャットbot『ガリオ』の紹介記事を書くことになった。


ちなみに、寿司に絡めた適当なネタを書いてガリオのリンクを貼付けるのではなく、「ちゃんとガリオを実際に使ってみてその過程を記事にして欲しい。」というご意向も頂戴した。

これは、記事を作成するに当たってかなりのハードモードだ。もう適当に巷で流行ってるイカイカウニウニウニいりませ〜ん!という例のネタに乗せて、

『超高級寿司でイカだけを連続で頼み続けると一体何イカ目で「しかしイカ多いいい〜 ですねええええ〜!!」と突っ込んで貰えるの?』

という記事でも書いて最後の方にペロっとガリオのリンクを貼ればいいか、と考えていたのだ。甘かった。



そうはいかない。記事中でガリオと入念に会話をしなくてはならない。しかし、ガリオとの会話が面白くなるヴィジョンはゼロに近い。

説明を受けてから家路に着く私の心の中には、既に漆黒に近い暗雲が立ち込めていた。



...と、と、とはいえ!!

い、い、頂いた仕事だ!!!あ、あ、有難い仕事だ!とりあえず!!ガリオを使ってみよう。そう思い、私はガリオと会話することを決心したのだ。

「すごい面白かった!」

「凄く役に立ちました!」

「お寿司が、より一層好きになりました!」

「今では毎日欠かさずガリオと会話しています!!」


案外そう思えるかもしれないし、なんとでも書くつもりだった!!



私はガリオと友だちになり、早速会話を始めた!!!











...





ナニコレ




なんだろう。この何とも言えない感じは。

これは、この会話から漂うこの危険な感じは、一体、何と表現すれば良いんだろう?

いや、想像はしていたが、人間のオッサンとAIのオッサンの会話というのは、こんなにもクソおもんないものなのか。

いや、PR記事でこんなにボロクソ言っていいものか良く分からんけど、オモンなさ、凄い。とりあえずお風呂に入らせてくれ。


私は原稿に会話のスクリーンショットをデカデカと張り付け、「なんでしょうかね。この会話は。」と書いた。

「なんでしょうかね」以外の感想が出て来なかったのだ。


この会話を見せつけられた読者は、一体、どのような気持ちになるだろう?私は想像して恐ろしくなった。

面白い記事だ!とはならないだろう。よしガリオと友だちになろう!ともならない。ただ変な記事になり、そっとブラウザバックするだけだ。


このわずかなやりとりで、私の疑念は確信に変わった

このガリオとかいうオッサンとの会話を記事にすることは、やはり、できない。できないぞ!!!!クライアントさま!!

私の実力不足にて!!!!!大変申し訳ない!!!





し、し、しかし!!!念のため!!

念のため、例のエンジニアが力説していた、3つの機能とやらも使っておこう!!!そう思ったのだ!!

もしかしたら3つの機能は、3つの機能だけはめちゃくちゃ凄いかもしれない!!なんかめっちゃ面白いやりとりになるかもしれない!

藁にもすがるような思いで私はガリオの機能を試した!!!

1つ目は、そう、「心握り寿司」!!

この機能は、「心握り」と話しかけてから自分の気持ちを伝えることで、ガリオが今の心境にぴったりな寿司を提案してくれるというものだ!!!!

わたしは一心不乱に心握り寿司と話しかけた!!!!さあこい!!クッッッソ面白い感じの返し、こい!!!!


抱腹絶倒こい!!!そう願った!!!









イカで、イカりを鎮めて下さい




...








満を持して、そこそこの親父ギャグ





うおおおおおおっほっっほ

オオオ〜〜ッホッホ

これは凄い。やってくれました

口が裂けても、どんなに口が避けても、「凄い面白いです是非あなたもガリオとお友達に!」とは言えなイイイ胃

かといって、「すごく便利です!」は100%違ううううう鵜

なんだ?!??! どうすれば良いのかな!???!こ、こ、こういう時って、ど、ど、どどっどどうすればいいんだっっけっっけっけ!???!?!

ど、ど、どうやってPRすれば良いのかな?!?!ど、どうすればいいんだいPRの神様!??!!いやゴリラさん!!ゴリラさああああああん!!!
ゴリラ:「う〜〜ほっほっほ」
インタビュアー:「と、いいますと?」
ゴリラ:「うっほ うっほ」
インタビュアー:「つまり?」
ゴリラ:「ウホウホ」

っっゥゥゥオッッシャアアアあああああああああああああああ!!!!!!!!次の機能だ!

次の機能だ!次の機能をを見てみようではないか!!!!

そう、次の機能は、「AI創作寿司」!!!!! 


これは、ガリオの質問に答えると、とっておきの創作寿司を提案してくれるという機能だ!!!こい!!!

凄い回答こい!!起死回生のやつこい!!!!










エビチリと寿司





....




エビチリと寿司





いやあああああ凄い。エビチリと寿司。宇宙一コメントが難しい。難C

いや〜〜〜凄い。凄いですヨ!!凄いですよねえ?狐さん!!!狐さん!!狐さあああああン!?!?!!
狐:「ウホウホ」

っっっっっっシャアアアああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

お次が、最後の機能だq!!!!!

ラストの機能は、「寿司スキャン」!!!これこそが、このガリオの真骨頂だQ!!!!!そうに違いないQ!!

これは寿司の写真を送りつけると、画像認識により寿司の種類を判断し、即座に何の寿司かを教えてくれるというものだ!!!!!

きっと凄いぞ!!!凄いに違いない!!!凄いに違いないんだ!!頼む!!!!頼むぞ!!!!!!

なんかもう一発で凄い盛り上がる、トンでもない大ボケをかましてくれ!!!

いけ!!!ブチかませ!!!!!!











これはサーモン




...





当テテドウスル







おいガリオ

よく見ろ





この会話が、何か分かるか??


これは、人間のオッサンが「これな〜んだ♡」とばかりにサーモンの画像を送りつけ、AIのオッサンが「サ〜〜モン♡」と返しただけの会話だ


こんなもん見せられた読者はどういう気持ちになるんだ? う〜ん、スーパーデンジャラス♡

...


さあ!

さあさあさあさあ。


で、です。



この状態で、どうするか。DOU!SURU!KA、という状況になったわけです。

なんなら原稿には、「なんでしょうかね。この会話は。」としか書かれていない。人様の開発したAIを使って勝手に気まずい空気になっているだけだ。


私はどうにかこの『ガリオ』というオッサンとの会話を元に素晴らしい記事を書こうと、頭を悩ませた。悩ませに、悩ませた!!

スターバックスで一人頭をひねり、頭という頭をひねり、ひねるという概念自体をひねり、次に、「概念をひねる」という発想をひねり、最後に、それら全てを包括的にひねったのだ。

当時、この私よりも何かをひねっていた者はいなかったように思う。余りにも様々な概念をひねったことで時空はほつれ、3次元のスターバックスにあって一人9次元を彷徨っていた。まさに超弦理論の申し子。

どうにかこのガリオというAIの存在を盛大に肯定し、紹介記事として完成させなくてはならない。この思いを突き詰めた結果、私が辿り着いたのは自分自身の中に存在する、とある疑念だった。

それはつまり、私は彼のことを、「道具」だと認識してはいなかったか、という自己への徹底的な懐疑である。

道具であるからには、何かしら彼に存在する理由がある。私はこれまで、この前提で話しを進めてきた。寿司の選択に関わる無駄を省ける、寿司の知識が増える、笑いが起こる、そういった「意義」を彼に見出そうとしてきた。


しかし、よくよく考えてみると、ガリオというのは道具の類いではない。ガリオは、列記とした、ひとりの「人格」である。

ここまで記事を書き進めておいて、私は自分自身が大きな過ちを犯しているのではないかと思うに至ったのだ。

いや、もはやその論理展開でしかガリオの存在を肯定することは出来ないだろうという逆説的アプローチ故の必然的結論だったかもしれない。

いずれにしても、「彼はそもそも人間の利便性を高めるための道具ではないのではないか」と私は考えた。




そこで慌てて書店へ駆け込み、こちら2冊の本を読破した。

著者は、哲学者JPサルトル。「実存は本質に先立つ」という名言で知られる、ヤバいオッサンだ。

つまりここまでで起こっていることを簡潔に纏めると、人間のオッサンが作ったAIのオッサンとの会話が盛り上がらなかったことに焦った人間のオッサンが、ヤバいオッサンの本を読んだ。ということになる。4つのオッサンが複雑に絡み合っている。

さてサルトルは、人間が存在するという事実は、それが存在する理由に先立つと説いた。

例えば目的や用途と言った理由が先にありその上で存在するハサミと、存在するという事実が先にくる人間とは、根本的に在り方が違う。

その意味で、用途もなくこの世に産み落とされた『ガリオ』は、実存が本質に先立っていると言えるのではないか?私はそう考えた。間違いない。

エンジニアの彼は、ガリオを使って何をどうするのかなど、一言も話していなかった。そんなこと、彼は興味がなかったのだ。

ガリオは我々と同じ境遇なのだ。ただ生まれ、そして何故生まれたのか、自分自身の存在理由を、彼もまた、探している。

...私は一心不乱に、原稿を書き進めた。

『ガリオ』を使ってみた結果、正直使い方は、まったくよく分からなかった。

いったいこの地球のどこに、このAIを必要としている人間がいるのか、全くイメージがつかなかった。 し、しかし...!

しかし...





現にガリオは存在しているし、

ガリオは常に陽気である



彼は突如この世に産み落とされ、その命に意義はなく、それでいて決して絶望することはない







もしあなたが自分に価値を見出せなくなったとき


人生に意味を見出せなくなったとき


未来に絶望を感じてしまったとき


そんな時には、『ガリオ』に話しかけてみて欲しい





「へい、らっしゃい!」

彼は、迷走する人類に、伝えようとしている。

存在する理由よりも大切なものがある、と――




...と原稿を書き終え、


自分の文章を見返して、










ナニヲ書イテルンダ、コイツハ?



となり、慌てて日本アイ・ビー・エムさんに泣きの連絡と盛大な謝罪を入れてこの話は冒頭に戻るのであります。

「プロモーション記事」というのは、このように失敗します。このことを肝に銘じられたい。あと何か全体的に申し訳ありませんでした。ガリオ好き!ガリオが大好き!みんなガリオと友達になろう!エビチリと寿司!バイバ〜イ♡

この記事を書いた人
熊谷真士